[014]これからの私を支える考え(まとめにかえて)。

2017年03月25日

 

 「グローバル化」,「グローバル社会」,グローバルという単語を冠した言葉が溢れかえる社会になりました。いまの社会で求められる人材は,間違いなく,このグローバルをそのままつなげた「グローバル人材」であります。「グローバル人材」が求められる社会においては,人材育成の重要な担い手である学校教育でも,「グローバル人材を輩出できる仕組み」が求められるでしょう。では,そもそも「グローバル人材」とはどのような人材なのでしょうか。ここでは「グローバル」の概念を用いた三つの標語をもとに,私なりの見解を述べさせていただきます。

まず一つ目。

 

Think globally, act globally

 

技術の革新によって世界が身近な存在になった頃,世界では,自国での経済発展に限界を感じる国々が「グローバル化」への期待を急激に膨らませていきました。いまさら自国にとどまるエコシステムを構築してどうする,いまや「グローバルに考えて,グローバルに行動する」べきなんだ,社会の動向に敏感な人たちは次々に思考と行動を「グローバル化」していきました。それにともなって,人材,物資,金,様々なものがボーダーレスにやりとりされるようになりました。しかし,すべてがうまくいったわけではなく,良いものがボーダーレスになれば,それだけ良くないものもボーダーレスになっていったのです。それぞれの国に散りばめられていた貧困問題が,局所的にある国に集中するようになったり,越境を前提としないシステム(例えば固有のルールなど)が境界の崩壊とともに意味をなさなくなったりしました。なにより,皆が外を向くようになってしまい,だれも自分たちの足元を見なくなってしまったことによって沢山の問題を生みました。

 そこで,二つ目の標語が掲げられました。

 

Think globally, act locally

 

グローバルに考えるけれども,行動はローカルにおこそう,グローバル化と自国発展との折衷案です。グローバル化した思考によって,我々は,自国にとどまっているだけでは思いつかなかったアイディアなどを取り込む用意ができました。だから,今度はその取り込んだものを自国に落とし込むようなかたちで行動する,そうすることで,自国を等閑にすることなくグローバル化の流れに乗り続けることができました。グローバル化の流れによって様々なものが流出してしまった国々も,少しずつ,自国にグローバル化の恩恵を取り込めるようになっていったのです。

 最後に,この流れをさらに発展させた標語を紹介します。

 

Think locally, act regionally, leverage globally

 

直訳すれば,「現地で考え,地域で行動し,グローバルの仕組みを活用する」です。グローバル化によって得られた恩恵は,もはや私たちの手元に活用可能なツールとして存在しています。遠く海を越えてお互いの生活を報告しあえるSNS,共有したいことが起きたその場でSNSを更新できるデバイスの数々,インターネット環境さえ整えれば様々な国のニュースが読めて,ラジオが聞けるのです。しかも,誰でも。「グローバル」は目指すべき目的でも,取りかかるべき問題でもなく,活用するべきツールに姿を変えたのです。このことを踏まえて,自分の生活する場で問題を見定め,ツールとしての「グローバル」を活用し,地域で行動を起こしていく,そういったサイクルを回していくことが,いま,求められているのではないかと思います。

 私の考える「グローバル人材」とは,世界を飛び回る人ではありません。世界を変えようとする人でもありません。世界を道具にして自分の生活する環境を良くしていくことができる人です。道具としての世界を常に研き(更新し)続けるけれども,その道具が目的になってしまうことはなく,自分の生きる地域の発展のために行動し続ける人です。こうして皆が世界を道具に自分の地域を発展させていけば,それこそ世界全体が良くなっていくことに繋がる,とも思っています。

「現地で考え,地域で行動し,グローバルの仕組みを活用する」,このフレームワークがしばらくの間,私を支えてくれるだろうと信じています。だから,私は絶えず実行していきます。私が体現できなければ,後続する実践者が生まれません。まずはやってみて,それで皆をまきこんでいく。そうやってこれからも輪を広げていきます。
 


学生室長 Takuya Kobayashi