[008]現実に理想が飛び込―学校現場に学生が飛び込む―

2016年12月16日

 
 「学生が息を荒げて語るのは,どれもこれも現実を知らない理想論だ。」   私が学部三年生のとき,学校現場から飛んできたこの一言は,とても鋭いものでした。現場のことを知った気になっていた自分を恥じ,現実をきちんと見つめるべきだと反省しました。    「学生の語る理想論は,私に懐かしい学生時代を思い出させてくれた。」   学部4年生になった私は,この言葉を言われた瞬間に,その場で感涙にむせびました。現場を第一に考え,現場こそ尊重すべき現実だという極論に縋り付いていた自分を(部分的に)解放しました。    「学生の頃に語った理想論が,私のいまを形づくっているのだろう。」   修士1年になり,講師として教壇に立たせていただけることになって,そう強く実感しました。後輩の学部生が語る理想論に耳を傾けつつ,現場の先生方の過酷な現実(のほんの一部)も体感しました。    「理想論か否かが問題でなく,児童生徒側にある考えか否かが問題である。」   修士2年のいま,これまでの活動を振り返って,当たり前の結論に至りました。自分の活動の良し悪しは,振り返ってみれば,児童生徒側に出発点を持っていたかどうかで決まっていました。    学校現場に学生が飛び込んだとき,両者の間には,つねに児童生徒の存在が必要です。この児童生徒の存在が軽視されてしまうと,かならず行き詰まり,最悪の場合,衝突が生まれてしまいます。しかし,児童生徒の存在を前提として,それを中心に議論を深めていく限りは,たかが学生の我々も,されど学生というように学校現場での活躍の機会をいただけます。それだけでなく,我々が(恐る恐る)展開した理想論が,行き詰まっていた現実にブレイクスルーをもたらすこともあるのです。ですから私は,(少なくとも学生であるうちは)積極的に理想論を持ち出していこうと考えているのです。現実と理想がシナジー効果を生む,その瞬間を生み出せるのは,(良い意味で)生意気な学生の理想論なんだろうと思います。  
 


学生室長 Takuya Kobayashi