[001]僕がサークルを始めた理由

2016年10月19日

 

僕はサークルを始めた。修士2年にもなって、だ。周りからどう思われているのかは分からない。きっと「研究はしないの?」とか、「まだウェイウェイしてるのか?」などと思われているのだろう。でも、僕はサークルを始めた。というよりも、始めざるをえなかったと言ったほうが正しいかもしれない。

僕のサークルでは、「教育」というキーワードを持った活動が様々に展開されている。展開しているのではなく、展開されている。僕が展開したのではない、メンバーが勝手に展開していくのだ。「教育」というキーワードをどれくらい意識しているかも、活動によって様々である。緩く、なんとなく、「教育」であればよい、そう思っている。

僕の手元にあるのは、ブレーキレバーと錆び落とし。メンバーはいつも全速力で活動を展開している。この勢いは、そんじょそこらのサークルには負けない(競っているわけではない)。ただ、面白いことに、彼らはブレーキを持っていない。だから、気がついたらオーバーヒートしていたり、壁にぶつかっているのに前進をやめられなかったりする。そういうときに、僕がメンバーに近づいてブレーキをかける。立ち止まって考えたり、ここまでの道のりを振り返る必要を訴えるのだ。また、元気よく進んでいるのに、キィキィ音がなっているメンバーがいれば、錆び落としで磨いてやることもある。本人は元気に楽しくやっていても、錆びていては騒音被害甚だしいし、本人のパフォーマンスも100パーセント発揮できていない。磨くといっても、ちょっと長く生きてるからたまたま知っている知見を教えるだけである。ブレーキレバーと錆び落とし、ただそれだけ、それ以上のことはしない。

はじめは、誰かがやればいいと思っていた。僕が思いつくようなサークルだから、どうせもう誰かやってるか、そのうち誰かやるだろうと思っていた。学部 2 年のときに自分なりに探し回ってみて、意外と存在していないことを知った。そのあとで構想をある程度練ってからは、誰かが始めるのをじっと待っていた。でも、待てど暮らせど始まる気配がどこにもない。そうこうしているうちに、僕みたいに待っている人たちばかり増えていることに気づいた。みんな待っている?誰も始めない?じゃあこの待っている人たちはこのまま終わり?そう思ったとき、僕のなかにとてもシンプルな、でもなかなか書き出せなかった答えが立ち現れた。「僕が始めるしかないんだ」と。だから僕はサークルを始めた。修士 2 年にもなって、だ。
 


学生室長 Takuya Kobayashi